末永く「運動を継続」するには

キーワード:リハビリ本舗、運動継続、自己効力感、行動心理学、リハビリ

突然ですが、「健康であること」ってめちゃくちゃ重要ですよね?

 

 

そもそも、「健康であること」は人によって異なるとされていますが、もう少し嚙み砕くと、「自律した状態:すなわち自身の意志で自由に行動できる状態」のことだとも言えます。

 

 

こう表現すると、より重要度が増すような気がしますね。

 

 

今回は、その「自立した状態」を「保つ(維持する)」ためのアクションとして、「運動」を取り上げ、その継続方法についてお話させていただきます。

 

 

歳をとると、筋力が弱ったり、バランスを崩しやすくなったり、歩くのが遅くなったりと身体機能に変化が生じます。これがいわゆる“老化”です。

 

加齢は止められませんが、老化による先述のような変化は食い止めることができます。

それが、「運動」です。

 

しかし、運動によって、得られた効果は運動を中止することでいとも簡単に消失してしまいます。

 

 

ということは、

 

 

「運動を続ける」ことが重要であることは言うまでもありません。

 

 

2017年における日本の65 歳以上の運動習慣者(1回30分以上の運動を週2回以上実施し、1年以上継続している者)の割合は、男性で46.2%、女性で39 0%だったとのことです。この数字をどう捉えるのか。さらに10年遡るとこの半分くらいの割合でした。

徐々に健康志向が高まり、環境も整備されてきたのだと考えられます。

 

 

そして、健康日本21(第2次)では、今年(2022年)男性58%、女性48%に到達することを目標と掲げておりました。

今年中に結果が出るようですね。どうなるでしょうか。

 

 

このように、国の健康施策としても、運動の継続は課題となっており、皆さまお1人お1人の意識改革に加え、運動の習慣化が必要となってきています。

 

 

 

ではどうのように継続すると良いのか

 

少し、専門的なお話になりますが、できるだけ簡潔に分かりやすくお伝えしますね。

 

まず、「Health Action Process Approach(HAPA)モデル」なるものがございます。

 

これは何かと申しますと、健康行動に至る心理的過程を示したモデルと言われており、各分野で研究が進んでおり、理学療法士の間でも認知度が高まっています。

 

その理論の中では、「自己効力感:できる自信」、「結果への期待」「リスク認知」によって、「行動意図」が生まれ、「行動プラン」が立てられ「行動」に移行すると言われています。

 

 

【言葉の整理】

自己効力感:結果を出すために適切な行動を選択し、かつ遂行するための能力を自らが持っているかどうか認知するための言葉 = 自信

 

結果への期待:こういう行動をしたらこういう結果になるだろうという予測

 

リスク認知:望ましくない出来事の不確実性に関する主観的な見積り

 

 

自己効力感にも種類がある

 

 

✓定期的な運動を始めることに対する自己効力感

アクション・セルフエフィカシー

 

✓定期的な運動を一旦中断した後に再開することに対する自己効力感

リカバリー・セルフエフィカシー

 

✓運動を行うことを妨げる要因に対処することに対する自己効力感

コーピング・セルフエフィカシー

 

 

どの自己効力感が大切?

 

このように、はじめる自信や中断したあとに再開する自信、様々誘惑に対処する自信が重要だと言われております。ただし、365日運動を継続することは、容易ではありません。

ということは、様々な誘惑に負けてしまったり、何らかの事情で中断する事態を前提として考えると、中断しても再開する自信(リカバリー・セルフエフィカシー)が重要だと言えます。

 

ある研究においても、「どこで(運動する場所)」や「なにを行うか(運動の種類)」といった要因と運動継続率の関係性は報告されています。

 

では、「いつ(どんな時に)」という時間的な側面から考えてみるといかがでしょうか。

 

結論から申しますと、運動を継続できていた方の90%が、「生活パターンに組み込んでいた」という結果が得られています。

 

要するに、〇時になったら〇〇運動をする!

 

ということではなく、朝食前の散歩、入浴後のストレッチといったように、日常生活活動の中に埋め込んでしまう事が重要ではないか。と言われています。

 

また、そのようにプランニングしておくことで、何らかの事情で中断してしまった際にも「朝食前」「入浴後」といった、日常生活活動がある限り、再開できる可能性が高まります。

 

先述した通り、リカバリー・セルフエフィカシーを高めることが、運動継続において重要な要素だと言えます。

 

まずは、生活パターンを振り返り、どの活動の前後に、どんな運動を行えそうかを考えてみるのもよさそうですね。

 

 

 

いかがだったでしょうか。

 

「運動を継続する」ことは容易ではありません。

しかし、誰の為でもなく、ご自身の為の行動です。

 

結果期待やリスク認知を(所謂、メリット・デメリット)行うことからはじめてみましょう。

 

【参考文献】

厚生労働省:平成29年度国民健康・栄養調査

介護予防教室参加者における運動の継続に関連する要因

運動習慣に関する心理行動医学的研究

在宅高齢者の運動習慣と身体・認知・心理機能との関連

長期運動継続者が用いている運動継続への動機づけの効果

運動継続者に見られる継続理由の特色