キーワード:自粛、座位時間、生活活動、METs、プラス・テン
COVID-19感染拡大に伴い大阪府では緊急事態宣言が発出されました(4/25~5/11)。
今回も、不要不急の外出を控えるよう協力要請が出されています。
国立長寿医療研究センターの調査報告では、COVID-19感染症の影響で、高齢者の身体活動は3割減少しているとの報告がありCOVID-19による活動自粛は全身に様々な悪影響を及ぼすことが容易に予測されます。
さて、このような状況となり、皆さんは自宅で座っている時間が増えたのではないでしょうか?
運動が健康によいことは広く知られており、1日の中で長く座っていることが健康によくないことは皆さんもご存知だと思います。
いわゆる『座りすぎ(too much sitting)』は2000年以降から子供の肥満防止、成人の心血管あるいは代謝性疾患を中心に研究が大きく進展しています。1)
座りすぎが総死亡および冠動脈疾患患のリスクを高めるという報告もあります。 2)
つまり、健康のために運動をしていても、座っている時間が長くなるにつれ、健康に悪影響を及ぼすことになります。
では新しい生活様式の中でどのような点に注意して過ごせばいいのでしょうか?
今回は身体活動に焦点をあててお話ししていきます。
身体活動(physical activity)とは、安静にして いる状態よりも多くのエネルギーを消費する全ての動作であり、「生活活動」と「運動」に大別されます。
- 「生活活動」・・・日常生活における労働,家事, 通勤・通学などの身体活動
- 「運動」・・・スポーツ等の特に体力の維持・向上を目的として計画的・意図的に実施し、継続性のある身体活動
身体活動の強度は、一般的にメッツ(metabolic equivalents:METs)によって
「低」「中」「高」の三段階に分けられます。
METs数による、成人の1 日の覚醒時間における各強度の割合は、
座位行動 55 ~ 60%、低強度活 動 35 ~ 40%、中・高強度活動 5%であると報告されています 1)
このデータからいかに座位行動と低強度活動の時間が多いかが読みとれます。
- 低強度運動・・・1.0~3.0METs未満の身体活動
- 中強度運動・・・3.0 ~ 6.0 METs 未満の身体活動
- 高強度運動・・・6.0 METs 以上の身体活動
健康長寿を実現するために、「1 日 8,000 歩、中強度活動20分」を推奨しており、
身体活動の低い者よりも高血圧症や糖尿病の発症率が大幅に下がる3)
と述べています。
そのほか、
中強度活動は海馬容量に保持的に作用し記憶に波及する 4)
ことも報告されており認知症の予防あるいは進行の抑制ができる可能性が期待されています。
また厚生労働省から発表されている「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」では1日60分、元気に身体を動かすことを奨励しています。通勤で歩くことや階段を利用すること、家の中で掃除したり庭の手入れをすることなども身体活動(身体を動かすこと)です。
新しい生活様式における、様々な場面で活動的に過ごす工夫をしてみましょう。
1日60分は連続した時間出なくても構いません。まずは今より10分多く身体を動かす「+10(プラス・テン)」を奨励しています。
「健康づくりのための身体活動指針(アクティブガイド)」https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002xple-att/2r9852000002xpr1.pdf
日常のなかで座り過ぎを減らし、年齢に見合った最適な強さで活動することが私たちの健康を支えることになると言えます。
感染予防を図りながら1日60分、元気に身体を動かす、今より10分多く身体を動かす「+10(プラス・テン)」などを意識して過ごしていきましょう。