▶運動を誰かと一緒に行うことの影響|ソーシャルキャピタルの視点から

キーワード:ソーシャルキャピタル、運動、介護予防、地域サロン、リハビリ本舗

 

春の陽気となり、今年こそは身体を動かそう!と考えておられる方も多いのではないでしょうか。しかし、ご自身お1人で行うにはなかなかの努力が必要となります。

そこで今回は、「運動を誰かと一緒に行うことの影響」について過去の研究データよりお伝えさせていただきます。

運動を誰かと一緒に行うことの影響

地域の体操や集まりに参加することで、家族や友人と運動サークルのような組織的な活動に参加することは、仲間との親睦を深めたり、新たな知り合いができることに繋がると考えられています。

 

実際に、運動を家族や友人など、誰かと一緒に行うことによって、ソーシャルサポート、ネットワークなどのソーシャルキャピタルへのポジティブな関連が報告されています。

代表的な研究としては「JAGES(https://www.jages.net/)」で多く行われています。

 

例えば…

生活機能の高い高齢者において、地域サロン参加者は非参加者よりも、男性では老人クラブとボランティア組織に、女性では老人クラブとスポーツ関係のグループに新たに参加する割合が高かった。

サロン参加者のうち、1年前と比べて会話の機会が増えたものは62.2%

趣味の会への参加機会が増えたものは30.6%

スポーツ関係への参加機会が増えたものは23.7%であった。

 

これらの研究から、体操などの運動を実施するサロンに参加することで、参加者だけでなく運営側のボランティアも個人レベルのソーシャルキャピタルが改善することが示唆されています。

 

中年期を対象とした研究では、厚労省が実施した「中高年者縦断調査(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/29-6.html)」の結果を用いた研究があります。

 

メンタルヘルスの不良をアウトカムとした縦断研究によると…

 

男性では、運動やスポーツを実施しないものと比べ、1人で実施するもののオッズ比は0.93、誰かと一緒に実施するものは0.84、両方実施するものは0.79であった。

女性ではそれぞれ0.89、0.86、0.97であった。

 

※オッズ比:「見込み」のことで、ある事象が起きる確率pの、その事象が起きない確率(1 − p)に対する比を意味します。単純な〇倍という意味ではありません。

 

同様に日常生活動作の不良をアウトカムにした縦断研究では…

 

男性では運動やスポーツを実施しないものと比べ、1人で実施するもののオッズ比は0.81、誰かと一緒に実施するものは0.68、両方実施するものは0.79であった。

女性ではそれぞれ0.90、0.74、1.15であった。

 

いつも誰かと一緒に実施している者はメンタルヘルスや日常生活動作の悪化リスクは低かったのです。そのため運動やスポーツは誰かと一緒に行うことがメンタルヘルスや日常生活動作の保持には有効であることが示されていました。

 

高齢者を対象とした研究では…

運動を1人で行う場合と誰かと一緒に行う場合における主観的健康観との関連を検証したJAGESによる横断研究があります。

 

その結果を見てみると…

 

いずれの運動形態であっても実施しているものは実施していないものと比べ、主観的健康観が不良であるもののオッズ比が有意に低かった。

さらに、運動をしていないものを除外し、運動を「1人で」のみ行っているものを基準とした場合、実施頻度についてどちらかといえば「1人」が多い者、同程度の者、どちらかといえば「誰かと一緒に」が多い者、「誰かと一緒に」のみの者はいずれも主観的健康観が不良であるもののオッズ比は有意に低かった。

 

これらのことから、運動は行わないよりも行った方が健康には良いが行うのであれば、1人のみで行うよりは、少しでも誰かと一緒に行うことが健康に良さそうだということが分かります。

 

また、4年間での要介護認定率の高さを調べた研究でも同じような報告がなされており、1種類の組織への参加より3種類以上でオッズ比0.57となっていました。

 

 

最後に

 

運動は1人で行うよりも、誰かと一緒に行うことが重要で、またスポーツ関連のグループへの参加が要介護認定率の低下や介護予防にも向いているということが分かりました。

弊社で行っているノルディックウォーキングイベントは毎月1回実施しております。運動自体の効果も期待できますが、「誰かと一緒に」「スポーツ関連グループ」「月に1回程度※」を満たしているノルディックウォーキングイベントに参加してみるというのも、良いかもしれません。

※今回とは別の報告で示されていました。

 

いかがだったでしょうか。

1人で黙々と運動に励まれている方も多くいらっしゃると思います。また、これから運動をはじめようと思っている方はこの記事を参考にしてみてはいかがでしょうか。