高齢者における食欲と身体活動と健康

<高齢者と食欲>

高齢者では、若年者に比べて食欲が低下している場合が多くなります。その理由は、多くの高齢者はスポーツなどの運動をしなくなります。その結果、からだが消費するエネルギー量が少なくなり、食事からエネルギーをたくさん摂らなくてもよくなります。したがって、高齢者では若い人よりも食欲が減って、若い人ほど食べられなくなる場合が多いと考えられています。

<からだを動かすことが大事>

食欲が低下して食事が摂れなくなると、体力がなくなったり、病気への抵抗力が落ちたりします。エネルギー摂取量が少ないと、からだは筋肉を減らしてそこからエネルギーを得ようとします。ミネラルやビタミンなどの必須栄養素も足らなくなり、さまざまな障害がでてきます。

高齢者には、からだを動かすことが一番大切です。運動をして筋肉を増やす。食欲を増進させて健全な食生活を守り、丈夫なからだをつくっていくことが健康長寿の最も基本です。

<からだを動かすこと(身体活動)と健康>

運動不足だと、病気になりやすくなるのでしょうか? まず、身体活動量と総死亡率を調べた研究をご紹介します。

Paffenbargerらの調査において、1週間の身体活動量が「2000kcal未満」の人では、「2000kcal以上」の人に対して総死亡率の相対危険率は1.31である、つまり30%ほど死亡率が高いという結果でした(図1)。

図1)身体活動量と総死亡率(Paffenbarger,R.S, 1986)

他にも、高齢者において毎日の歩行が死亡率の低下に関与していることを強く示している研究(Honolulu Heart Program、1998年)。週に3回以上1回20分間の歩行または自転車に乗るなどの活発なライフスタイルを送っているものに比較すると、運動していないものの総死亡率は2倍であると結論づけている研究(Zutphen Elderly Study、1999年)。また、身体活動量は、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、心筋梗塞や脳卒中などの大血管障害、転倒・骨折、うつ病などと密接に関係があることも報告されています(Paffenbarger,R.S, 1986)。

いまからでも遅くありません。

ご自身の食欲(栄養)と身体活動量に、一度、向き合ってみませんか?